動物用ワクチンの出来るまで 動物用ワクチンの出来るまで (04/04/18)はじめに
ワクチンは病原体そのものあるいは病原体の分泌物でつくられ、それらを体の中に入れあるいは感染させ、病気に抵抗する力(免疫)を作らせるものです。
ワクチンのはじまりは、ジエンナーが天然痘の予防のために、牛痘のウイルスを人に与えて免疫を作らせたのが最初です。その後パスツールが家禽コレラと炭 その生菌(病原性を弱めて生きたまま使用する)ワクチンを、また狂犬病の生ウイルスワクチンを作りました。さらにその後細菌とかウイルスの不活化(殺し た)ワクチン、それらの一部分を利用した成分ワクチン、不活化(無毒化)した毒素のワクチン等が続々と開発されてきました。
日本ではいろいろな動物が飼育されていますが、ワクチンを必要としている動物には、家畜としては牛、馬、羊、やぎ、鶉、アヒル、七面鳥と鶏、コンパニオ ンアニマルでは犬と猫がいます。これらの動物は多数飼育されており、病気が流行すると被害も大きくなるため、あらかじめ免疫をつけさせておくことが必要に なるためです。
ワクチンは開発しても勝手には売り出せません。農林水産省に製造承認申請書を出し、認可を得て初めて、製造し、市販することが出来ます。ワクチンは申請 書にのっとり製造され、製造されたワクチンは自家検査し、さらに国家検定を受け、安全性と免疫効果の確認された後に、市販されることになります。その後実 際に使用されたワクチンは副作用の有無を調査され、発現した場合にはその原因から対策まで届け出なければなりません。副作用の強い場合には許可されたもの でも承認が取り消されます。また製造施設はGMP基準(医薬品の製造管理と品質管理に関する基準)に適合し、また試験して出された成績はGLP基準(医薬 品の安全性に関する基準)に適合したところでだされたものでなければなりません。このようにワクチンには幾重にも規制が加えられ、問題の起こらないような 仕組みのもとで製造、販売がなされています。
動物を死亡させ、生産性を著しく阻害するもの、また発見が遅れて重症化するもの、治療費が大きくなるような病気に対して、これを予防するためにワクチン が開発されています。あらかじめワクチンを投与しておくことで抵抗力を高め、感染したときの被害を最小限度に食い止めることが目的です。家畜用のワクチン は畜産物の生産のための必須な資材と考えられています。そうは言っても病気が発生していないとき、家畜自体の価格が低い場合、さらに生産物(乳、肉、卵さ らに加工した畜産物など)が安くなると、経費を安く上げるために、使われなくなる傾向もあります。
現在まで開発されているものあるいは輸入されているワクチンは牛用で22種類、馬用で6種類、豚用で43種類、鶏用で58種類、犬用で14種類、猫用で 8種類、魚用で6種類あります。
1.ワクチンの開発
ワクチンは動物を治療できないか、出来ても費用のかかる場合、また家畜では畜産経営上経済的に大きな影響を与える病気に対して開発されています。ワクチ ンの開発には莫大な経費と完成までに長い時間がかかります。開発の大略を述べると次のようになります。
病気が流行した場合経済的損失の計算を行ない、また一方では病気の研究を進め、どんな予防法をとれるのか検討されます。予防の必要な病気と判断されて、 初めてワクチンの開発が開始されます。
まず不活化ワクチンか生ワクチンのどちらを開発するのか考慮されます。開発するワクチンの種類で検討する項目が異なってくるためです。一般には不活化ワ クチンでは、病原体をそのままか、部分的に精製するくらいで製品化する(あまりに手がかかり、経費のかかるものでは価格が高くなるので使用されない)の で、期間的には短くてすみます。一方生ワクチンではワクチン株を弱毒化するために時間がかかるため、かなり長期間かかります。
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